父から母への「ありがとう」
それは父が亡くなる一週間前でした
昭和一桁の頑固な世代
母はいつも父の寛ぎを最優先にしていました。
仕事から帰ったら直ぐに晩酌できること。
それも熱燗なら熱く
ビールなら冷たく
おしぼりも酒の肴も
ジャストなタイミングで出す
お刺身に始まり、焼き魚、お肉、シャコや海老、蟹、あたりめ
延々と飲み続ける父の満足を
子供達より最優先していました
口ごたえも許さない。
先に寝るのも許さない。
ただ、隣でじっと父の話を聞くこと。
そんな父が膵臓癌で余命半年
私たち兄弟は父にも、母にも真実を告げず見送りました。
亡くなる一週間前に、いつものように背中をさすっている母に初めて父が
ありがとう…
とても驚いて子供達に「お父さんがありがとう~って言ってくれた」と母は嬉しそうに言いながら不安そうにしていたのを忘れません。
父はきっと残り少ない自分の命を感じて
母はそんな言葉を言わない父の余命を感じて
「一番嬉しくて、一番悲しいありがとう~」
jibun beauty 川本眞見